【創業支援コラム】適格請求書
適格請求書
例年夏の時期は、新しく会社を設立したいという方が、春の時期よりも少し減る傾向にあります。
しかし今年の7月は、八王子市で株式会社を設立したいというお問い合わせをいただいています。また、八王子市で法人成をしたいが、株式会社の設立がいいか、合同会社の設立がいいか、というご相談もいただいております。ありがとうございます。
令和5年10月1日から、消費税の仕入税額控除※1の条件として「適格請求書等保存方式」が導入されます。この制度は個人的に、消費税の税率アップよりも恐ろしい仕組みであると感じています。
なぜ恐ろしいか、と申し上あげれば、「消費税を納税している企業※2は、免税事業者※3からの仕入・外注費・経費の消費税額を、売上の消費税額から差し引くことができない」ということになるからです。
※1 売上の消費税額から差引く仕入・外注費・経費の消費税額を「仕入税額控除」といいます。
※2 企業とは、法人と個人事業者をいいます。
※3 免税事業者とは、消費税を納税していない企業をいいます。
例えば、ある企業の年間売上高が消費税込で16,500,000円、外注費が消費税込で
8,800,000円、社長の役員報酬が年間6,000,000円であったとします。
現在は、下記のとおり、今期の消費税の納税が700,000円で、利益1,000,000円に対して、法人税、事業税、住民税を納めていただくことになります。
税込金額 うち消費税
売 上 高 16,500,000円 ( 1,500,000円)
外 注 費 △8,800,000円 (△ 800,000円)
役員報酬 △6,000,000円 ( 0円)
消 費 税 △ 700,000円 ( 0円)
利 益 1,000,000円 ( 700,000円)
仮に、その企業の外注委託先が、すべて免税事業者への支払であったとします。
令和5年10月1日からは、外注費の仕入税額控除は次のとおりとなります。
税込金額 うち消費税
売 上 高 16,500,000円 ( 1,500,000円)
外 注 費 △8,800,000円 (△ 640,000円)← ここが変更になります。
役員報酬 △6,000,000円 ( 0円)
消 費 税 △ 860,000円 ( 0円)
利 益 840,000円 ( 860,000円)
同様に仮に、その企業の外注委託先が、すべて免税事業者への支払であったとします。
令和8年10月1日からは、外注費の仕入税額控除は次のとおりとなります。
税込金額 うち消費税
売 上 高 16,500,000円( 1,500,000円)
外 注 費 △8,800,000円 ( △ 400,000円)← ここが変更になります。
役員報酬 △6,000,000円 ( 0円)
消 費 税 △1,100,000円( 0円)
利 益 600,000円 ( 1,100,000円)
同様に仮に、その企業の外注委託先が、すべて免税事業者への支払であったとします。
令和11年10月1日からは、外注費の仕入税額控除は次のとおりとなります。
税込金額 うち消費税
売 上 高 16,500,000円 ( 1,500,000円)
外 注 費 △8,800,000円 ( 0円)← ここが変更になります。
役員報酬 △6,000,000円 ( 0円)
消 費 税 △1,500,000円 ( 0円)
利 益 200,000円 ( 1,500,000円)
これらを比較くださいませ。免税事業者への消費税相当額の支払は、売上の消費税から
差し引くことができなくなるため、令和11年10月からは消費税の納税は、「1,500,000円」となってしまうのです。また、最終利益まで大幅に減少してしまいます。
令和5年10月1日から令和8年9月30日までは、「適格請求書」か「適格簡易請求書」の保存がなくても、現行の請求書・領収書の保存があれば、免税事業者からの
「仕入税額控除」は80%が控除可能です。
また、令和8年10月1日から令和11年9月30日までは、「適格請求書」か「適格簡易請求書」の保存がなくても、現行の請求書・領収書の保存があれば、免税事業者からの「仕入税額控除」は50%が控除可能です。
では令和5年10月1日からの、「適格請求書」はどうすればいいのでしょうか。
まず、適格請求書を発行できるのは、適格請求書発行事業者に限定されます。
適格請求書発行事業者となるためには、税務署にあらかじめ登録が必要となります。
この登録は、消費税の課税事業者※4でなければ、登録を受けることはできません。
※4 消費税の課税事業者とは、消費税を納めている法人・個人事業者のことをいいます。
現行の売上の請求書には、企業名、お客様名、日付、取引内容、請求金額、が記載され
ているはずです。これらの現行の請求書に、
1 登録を受けた登録番号
2 「10%」または「8%」という消費税率
3 消費税額
を記載することが必要となります。
多くのお客様は、消費税額を記載されていますので、実質は、
・「適格請求書発行事業者の登録」をして、令和5年10月1日以降その登録番号を
記載すること
・消費税率「10%」または「8%」と記載すること
の2点です。
ところで、令和5年10月1日から開始されるインボイス制度では、適格請求書発行事業者が、コンビニなどの小売業、飲食店業、タクシーなどの不特定多数の者に商品の販売やサービスを提供している事業者であれば、適格請求書に変えて、「適格簡易請求書」を発行することが認められます。
「適格簡易請求書」は、上記の
2 「10%」または「8%」という消費税率
3 消費税額
のどちらかを記載すればよいこととされます。
これにより、コンビニなどで購入するお茶代などは、登録番号が記載されたレシートや領収書が、「インボイス」となるのです。
令和5年10月1日からは、3万円未満であっても、登録番号が記載されたレシートや領収書がなければ、消費税の「仕入税額控除」ができなくなってしまいます。
唯一例外が、電車・バス代、自動販売機で購入するお茶代などです。
これらのものは、現行通り出金伝票や精算書の記載で消費税の「仕入税額控除」の適用ができます。
問題となることが想定されるケースをいくつか掲げます。
・建築業などの個人外注費で支払明細書を請求書の代用としている場合、あるいは
請求書がもらえたとしても、消費税額の記載がない場合
・IT企業などで個人からの外注費で、消費税額の記載がない場合
・デザイン事務所などで個人からの外注費で、消費税額の記載がない場合
・ホステス報酬などで支払明細書を請求書の代用としている場合
・個人に対して、例えばお客様をご紹介された方に対して支払う紹介料の領収書
または振込の控え
・インターネットで購入した消耗品、文具代、書籍代などの領収書
・個人経営の喫茶店、スナック・パブなどの接待飲食代の領収書
・個人タクシーのタクシー代の領収書
これらのケースでは、令和5年10月1日以降は、相手先からの請求書や領収書などが
「適格請求書」か「適格簡易請求書」に該当するかどうかが、消費税の「仕入税額控除」の適用ができるかどうかの判断基準となります。
令和3年10月1日から、「適格請求書発行事業者の登録申請書」の受付が開始されま
す。
免税事業者にとっては、非常に悩ましい制度であると感じています。
「適格請求書」か「適格簡易請求書」に該当するかどうかは、打ち合わせ時にご説明を致します。
令和5年10月1日から、消費税の仕入税額控除の条件が整っているかどうかを、最初は確認させていただきます。
領収書は、ノートかコピー用紙に貼って整理していただくことをお願申し上げます。
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